THE BEST REVENGE
支店長は引き出しから鞄を取り出す。
悲哀漂うその仕草に加え、
さらに情けなさを感じたのか、
机に両手をつき、懺悔した。
「まあ、今までなんて未練がないわけじゃない。私1人がそう言う目に遭おうが、特に焦りもうろたえもしない。家族だって、別にどうとも思わないだろう。思いもしないだろう。例えば、妻だって、本当はあんな私のことを何より愛していたかも知れない。まあ…いつも帰ってくるたびに、武藤ばりの低空ドロップキックを食らってたけど……ああ…あれもプロレス特有の相手の力を100%受けて、120%の力でそれを返す、その、あの、実は、エンターテイメント的な愛情表現だったかも知れない」
「——何ですか、その愛情表現は」

マヤは、まだいたの?
そう言いたげな顔で支店長を見つめる。
< 146 / 211 >

この作品をシェア

pagetop