THE BEST REVENGE
「元気でね」
「今のところは元気だけどね」
「これからに期待なんてしないわ。でも、今だけは、しっかりやってね」

彼女はそう言うと
笑って奏梧を見送った。

彼は階段を上りながら
携帯電話を手に取って
誰かにかけ始めた。
プッシュ音が軽快に響いた。
刻まれる足音は
次のシーンを印象つけるための
ドラムロールのように
気持ちを高揚させてくれた。

ただマヤは密かに思った。
彼が向かうべき天国までは、
まだ遠いようだと。
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