THE BEST REVENGE
そうさ、彼女はそこにはいないよ。
もういないよ、もう。

彼はそれを心の内で知り得ると、
立ち上がり、煙草をその場に捨てて、
静かに立ち去った。
粉雪が煙草の灯を静かに消すと、
たたずんだ街の
すべてさえもう消え失せていく、
そんな気がした。

消え失せたものの虚しさが
この胸を焦がしてくれたなら、

きっと虚ろな世界であろうと
いつまでも幸せにいられたかもと思う。



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