THE BEST REVENGE
奏梧は信じがたい事実になすすべなく
膝を崩すのをこらえて、
立ち続けるしかなかった。
「俺、そうなる前に今を楽しむためならいくらでも自分売っちゃうネ。今売って今を楽しんだ方がマシ。逃げ出したって無駄だって分かってるのなら先にやったモン勝ちヨ」
「たかが県議にそこまでの力があるのか?」
「ただの……じゃないでしょネ? あの男、慈善者ぶった怪物ネ。70も過ぎて今度ハ国会議員に躍り出ようとしてるヨ。裏方回るのさえ飽きたのネ」
「じゃアレか? 使える金ズルはとことんまでってことか?」
「ホントの親に捨てられたが最後、とことんまで使い捨てネ。俺らの人生」
「ち……」
気が付けば差し込む陽の光が
期待の言葉もかけぬうちに
雲間から見え隠れする有様だ。

思い返せば、
苛立ちが隠せなくなってくる。
湧く怒りが助けを呼ぶその声の、
その響きを延々と蒸し返し、
ますますどろどろの暗がりへと
引きずり込もうとする。

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