初恋☆夜空
「ん‥実は、わかんないんだ」

正直に、答えたつもりだった。

サオリは、しばらく私の顔をじっと見た後、納得したかの様に、頷いた。

「じゃ、わかるトコ、説明してくれる?」

私は、うなずいて、昨日の出来事を話した。



「‥じゃ、やっぱり恋じゃん!」

話し終わって、一言。

「えっ?終わり?」

昨日の出来事を、結構細かく話したつもりだけど‥、一言で終わってしまった。

「あれ?微妙な顔してるよ、この子‥」

サオリは意外に驚いたって顔して、タマゴヤキをほおばった。

「だって、名前も知らない人だよ?」

「名前で恋する訳じゃないでしょーが」

「‥でも‥」

何だか不安になってきた。
‥恋だったとして、あの人が何処の誰かも知らない以上、また会える確率は低い。と、思う。

「私、ずっとこのままなのかなぁ‥」

お弁当を膝にのせたまま、手をそっと伸ばして、擦り傷にバンソウコウをはった、ひざこぞうに触れた。

「花‥」

つらそうな、サオリの声。心配、かけさせちゃったんだね‥。

私は、顔をあげてから、サオリに笑顔を見せた。“大丈夫!”って感じに。

「あたしってば、運悪いね~!‥よりによって、誰かも知らない人、好きになったかもなんてさぁ‥」

< 9 / 11 >

この作品をシェア

pagetop