ささやかではありますが
「そっかあ…。なんか、ごめんね」
「や、別に気にしなくていいから」
ぽたぽたと髪から雫が落ちる感覚が非常にキモチワルイ。
「…って、謙…もしや、傘それだけ?」
「?“それだけ”って?」
「あ、いや…私の分も持ってきてくれるものだとばかり…」
しまった!!
雨降ってる日のお迎えと言えば、相手の傘も要るじゃん!
「ごめん!すっかり忘れてた!」
うわ、俺って間抜け!
こんなに使えない助っ人、あったもんじゃない。
「謙らしいね」
思わず笑う静香に、ますます俺は頭が上がらない。
それでも心の広い静香は。
「いいよ、謙の傘に入れてくれるんでしょ?」
俺を責めるようなことは絶対言わない。
笑いながらさらりとそう言えちゃう静香が、俺は好き。
「…しょーがねーな!」
「しょーがないのはどっちだ!」
鞄でばしっと腰の辺りを叩かれて、濡れた服の水滴が飛び散る。
もうすっかり濡れてしまった俺は今更傘に入ったところで全く無意味だけれど、そんなびしょ濡れの俺でも静香が嫌がらないのをいいことに、ちゃっかり相合い傘で静香の隣を歩かせて貰う。
END.