ささやかではありますが
アンティルドウン
例えば、例えば俺がもしもっと背が高かったら。
例えば、もしもっと仕事ができたら。
もしもっとかっこよかったら。
もっと男らしかったら。


勇気があったら。












「武弘(たけひろ)、眉間に皺寄ってる。」


杏(あん)が、いきなり俺の眉間を人差し指でつっついたもんだから、俺はびっくりして目ぇでっかく見開いちゃったわけ。
そんな俺にびびった杏も目がでっかくなる。連鎖反応。


「うわ、武弘ってば目おっきーい!」

「杏が急に眉間つつくから!」

「えへへ」


悪びれる様子もなく、杏が笑う。


「…で、なんか考え事でもしてた?」

「何で考え事してたって思うの?」

「んー?なんとなくなんとなく」


杏が言葉曖昧に唇を尖らす。


「そいで、そんな顔するくらい何考え込んでたの?」


小首を傾げて俺の顔を覗き込むその表情に思わずどきりと胸が高鳴った。
やべーよ、その顔。
仮にそれが計算だとしても、俺は厭わない。
恋は盲目。怖いな!


「…別に、次の会議の議題が…」


俺が仕事の話を持ち出せば、杏は「あー成る程ね」っていう一言。
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