ささやかではありますが
ごめん杏、嘘ついて。
ほんとは杏のこと考えてた。
秘めたる想いを伝えたくて伝えたくて伝えたくて、けれどコンプレックスが邪魔して行動に移せない軟弱な俺です。
そりゃ眉間に皺も寄るっつーの。


「まあまあ、あれこれ考えるのも大事ですけどね、」


またしても杏が唐突に、両手で俺の顔を包み込んだ。


「考えるより先に行動した方がいいよ。だって時間もったいなくない?」


ああ全くその通りです。
少し冷たい小さな手の感触と、さっき自分が考えてたこととを思い出して、顔が熱くなりそう。


「…うん」


小さく頷くと、杏がぱっと笑った。


「考え事してる時、武弘は眉間に皺寄せる癖あるけどさっ、武弘は笑ってる顔が一番いいよ!」


両手の人差し指で俺の口角を上げる杏。
変な顔で笑う俺を見て、杏が笑う。





ああ、早くこの気持ち打ち明けなきゃ!
杏、このままあんたとこんなほろ苦い関係続けてたら、俺が窒息死しそーだよ!





END.
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