ささやかではありますが
椎名さんのこういう顔、あたし好きかもしんない。
いつだって騒々しい椎名さん。
けど、椎名さんは凄く素直で純粋な人だ。


「あ、椎名さん、お風呂使って下さい!長旅でお疲れでしょうし…パジャマはないけど」

「ありがとう。着替えなら沢山あるから大丈夫!」


確かに、そのキャリーの中には沢山の衣類。何泊もできそうなくらい。
かと言って、ウチに何泊もして貰ったら困るけどね!


「タオル、今出しますね……って椎名さん、携帯鳴ってますよ?」

「え?」


キャリーの上にポンと投げた携帯が、点滅しながらバイブレーションしてるのに先に気付いたのはあたし。
ひょいと持ち上げて、椎名さんに渡す。
…あれ?携帯についてる、このストラップって……?


「美香(ミカ)……あ、ウチのボーカルからだ」

「美香さんね。名前くらい分かりますって」


あたしの為にわざわざ説明しなくても。
律儀っちゃあ律儀だけど、こないだライブ見てるんだからメンバーの名前くらい知ってるから。


「もしもし、美香?」

『椎名!あんた、今どこ居んの?』


美香さんのよく通る声は、あたしにまで聞こえた。
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