ささやかではありますが
よし、第一関門クリア!


「これ、大したもんじゃないんですが…」


すかさず手にしていた菓子折りを前に出すと、ドアがもう10センチ開いた。


「わ、すみません…なんか気を遣って頂いて…」


恐々と、白くて細い手がチェーンの間から伸びる。
箱を受け取る指先は華奢で、しかもなんか女の子の甘いいい匂いする。
あー、隣の人が女の子でマジ良かった!


「…っと、それと一つ先に言っとかなきゃなんないことがあってですね」

「はい?」

「俺、仕事柄夜遅く帰ってきたり、ちょっとギターとかベースとか鳴らしちゃうと思うんで……煩くしちゃったらすみません」

「……はい」


あーあ、今かなり不審がってるよこの子…。
けどこればっかりは致し方ないと思う。寧ろ、愛想笑いでも笑顔を崩さないこの子はかなりマシ。








そんなこんなで、俺の引越しは一段落した。
彼女とは、時折エレベーターの中で会った。割と毎日会うのはゴミ捨て場。
普通に考えて隣にこんだけROCKな男が住んでたら彼女も怖いだろうなって思って、そのイメージを払拭すべく、会う度必ず挨拶した。
会釈じゃなくて、「こんにちは」だとか「今日天気いいっすね」だとか、きちんと声を掛けて。
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