ささやかではありますが
「だからさ、一緒にお風呂入ろうって」
未奈の視線はテレビのまま。
いやいや、女友達と風呂入るのっておかしくないか?
「無理!普通に考えて有り得ねえ!」
「なんでよ!」
いきなりキッと俺を睨む未奈。
俺、間違ったこと言ってねえし!
「俺、男だよ!?」
「知ってるよバーカ!」
「なら風呂なんて誘うなよ!」
「男だったら誘っちゃ駄目なんていう決まりがどこにある!」
ご尤、ご尤だけどさ!
なんかまるで俺が間違ってるみたいじゃん!!
「ちょっと落ち着け、頼むから!」
「嫌だね」
哀願する俺を無視して拒否の言葉。
どう考えてもおかしい。今日の未奈はおかしい。
「間違いが起きないように」ってベッドに入れてくれないどころかベッドから一番遠い部屋の一番隅に布団敷かせてるやつの発言とは思えない。
どうしたんだろって困惑の目で未奈を見てたら、険しい顔した未奈の目からぽろぽろ涙が落ちてきて。
「だって、ほんとは、直樹と1秒だって、離れたくない、気持ち、分かって、よ…」
声を詰まらせ、我儘な女王様は言う。
…いや、訂正。
本当は誰より淋しがりな女王様。
一番淋しいときに、何で俺を抜擢したのか。
理由なんて分かんないけど、今は聞かない。
そこに色めいた感情は無かったとしても、未奈が側に置いておきたかった相手が俺だっていう事実だけで満足してしまう俺は不謹慎で、やっぱり頭が弱いって言われても仕方ないんだろう。
頭が弱く男としての度胸に若干欠ける俺は、本格的に泣きだしてしまった未奈の頭をよしよしって撫でてやることしかできない。
END.