桜の木の前で
「なぜじゃ?」

「異界へ行っては普通の人間は体がもちませんわ。」

「じゃあ、どうすれば・・・」

「瑠璃の母に頼んでみたらどうじゃ?」

「母に?」

長老は優しく微笑む。

「桜乙女を生んだ母ならばどうにかできるかもしれぬ。」

「わかった。瑠璃の母上にあってくる。」

「刹那様!」

「なんじゃ?」

「どうか瑠璃を連れ戻してくださいね。」

懇願するような瞳でこちらにすがる仙樹。

ああ、前は他人を心配することなどなかった仙樹の心をも温かく変えてしまうのが瑠璃なのじゃな。

「当たり前じゃ。」

そう微笑むと仙樹はこくんと頷いた。

「刹那様。私もお供いたします。」

「そなたがいれば大丈夫じゃな。では雷行くぞ。」

「はい。」

そういって雷と2人で人間界へ戻って来た。
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