桜の木の前で
「ああ・・・やはり瑠璃様は唯一無双の姫様君なのだな。」

「それはどういうことなのですか?」

雷の独り言に真珠は不思議そうに尋ねる。

「刹那様が九尾のお姿の時は誰も寄せ付けません。そんな刹那様の心をいとも簡単に開かれるなんて並大抵の人間にできることではありません。そして・・・」

「そして?」

真珠は不思議そうに首をかしげる。

「空気が澄んでいませんか?」

「え?」

「ああ、確かに澄んでいるな。さっきの戦いで霞んでしまった空気が瑠璃が放った矢で一気に浄化された・・・」

「彼女を超える姫君・・・いいや、桜乙女は現れないでしょう。」

「瑠璃さんがあの伝説の桜乙女なのですか?」

「伝説とは?」

「私たちの世界には言い伝えがあります。
桜に愛されし乙女、天より桜とともに舞い降りん。
その乙女が舞い降りしとき、奇跡が起こるであろう。
花は咲き乱れ、空気は澄み、我らに幸せをもたらさらん。
という、言い伝えです。」

「たぶん、我が姫君のことかもしれません。」

「ええっ!だって本当に奇跡が起こったのですもの。」

そういうと真珠は涙目で泉里を見つめた。

「ああ、彼女に、いいや瑠璃に感謝しなければならないな。」

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