桜の木の前で
「ふふ・・・確かにそうですね。」

白夜は面白そうに呟く。

「でわ、私はこれで失礼します。」

そういうと白夜は出て行く。

「あっ、この華・・・」

私の手には露にきらめく華が握られたままだった。

わかっている。
泉里と言う人はきっと悪い人じゃない。

だけど・・・・

だけどあんなことされて悔しい。

私は華を握ったまま縁側に出る。

夜露が月の光にきらめく。

「まるで真珠みたいね。」

ぽつりと呟く。
そういえば泉里の恋人も真珠さんと言う名前だったらしい。

そんなことを考えているとふいに気配を感じて振り向く。
< 53 / 166 >

この作品をシェア

pagetop