桜の木の前で
すると泉里は真珠さんを抱き寄せた。

「もう、いいんだ。俺は疲れたんだよ。」

「何故・・・」

「真珠、もうお別れだ。」

「え?」

驚いて真珠さんは顔を上げる。

「君は逃げなさい。」

「っイヤです!」

「ダメだ。俺が君を無理やり人間界から奪ってきてしまったから君はここにいるだけ。そんな君を死なせられない。」

そういう和泉の顔は悲しみに溢れていた。
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