シフォンケーキ
一時間目は移動教室で、教科書を手に移動を開始する。
教室を抜け出ようとした時、
俺と他愛無い会話をしていた綾人が、思い出したように廊下の最後尾の席で教科書の用意をしていた安藤に声を掛けた。
「安藤さん、お菓子作り上手なんだってね。残念ながら僕は一口も食べられなかったんだけど、アズがすっごく美味しかったって誉めてたんだよね。
だから今度、僕にも作ってくれない?
いちごの入ったシュークリーム。食べたいな~。」
オマエ、オネダリってマジだったのかよ!
つか、何気にアップルパイから更に上級菓子にシフトしてるし!
どんだけ破滅を願ってんだっ!?
キラキラと無邪気な微笑に、安藤はきょとんと目を剥いたまま立ち尽くしている。
のぼせているというよりは唖然。
どうやら安藤に綾人マジックは効かないらしい。
それはともかく、このマズイ状況をなんとかしなくちゃ、だ。
「安藤、ちょっと!」
綾人を遮るように声を上げて、きょとんとしたままの安藤を有無を言わさず廊下に連れ出した。