シフォンケーキ
一世一代で吐いた嘘は、吐き慣れない所為で直ぐに詰まった。

安藤は押し黙った挙句、困ったような顔でチラリと上目遣いに俺を伺ってきた。


こんな時に不謹慎だが、ちょっと上気した頬とか潤んだ瞳とか、噂以上に可愛くて、戸惑う。



「でも・・・あの。梓クン、食べてくれたんだよね?」



くっ・・・・

可愛い顔で自害宣告なんてすんなよ。




俺は困った。



適当な言葉でこの場を収めてしまうことは出来る。

だが、あの料理の腕では安藤の将来が限りなく不安だ。

とりあえずは目先に迫ったXディー。

綾人は強請ったからには本気で貰いにくる。

妙なところで律儀というか、シツコイ性質なのだ。



イチゴシュークリームという名の新型兵器が炸裂するのは阻止すべきだろう。






「スゴク不味かった。この世のものとは思えないくらい。」



正直に言った途端、赤かった安藤の顔が青くなり、堪える間もなく瞳の縁から涙が零れ落ちた。



ヤバッ、泣かせた。

ストレート過ぎだ。



唇を噛み締めて、逃げるように俺の脇をすり抜けようとする安藤を慌てて掴む。


「ご、ゴメンネ。・・・梓クンに変なもの食べさせちゃって・・・」


振り向かない安藤から小さな謝罪。





違う。

そうじゃないだろ。

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