シフォンケーキ
自分の不甲斐無さに苛々しながらも俺は精一杯の言葉を紡ぐ。
「不味いのは仕方ないだろ。だってお菓子作りなんて殆どやったことないんだろ?
だけど安藤は頑張ったんだよな。
お菓子作りなんて殆どやったこともないくせに、それでも喜んでもらおうと思って一生懸命。
・・・俺はその気持ちが一番大切だと思うぞ。」
安藤は振り向かなかった。
だけど肩からすっと力が抜けるのが掴んだ腕から伝わった。
それにほっとして、次の言葉がすんなりと出た。
「それで・・・・俺でよければ教えてやろうか?お菓子作り。」
「え?」
驚いた安藤がようやく振り向いた。
「ホラ、さっき綾人にイチゴシュークリーム強請られてたろ?」
「ええっ!綾人クン、あれ本気だったのっ!?」
「ああ。アレでいて綾人って言ったことには責任持つタイプだから。」
というか責任を持って発言をしてほしいのだが。
殺人兵器製造パテシエという自覚があるらしい安藤はヒェェと竦みあがった。
普段冷静沈着な安藤にしては珍しい動揺っぷりが意外に滑稽で、思わずぷっと噴出す。