シフォンケーキ
安藤が思い出したように視線を上げる。
「そういえばさっき・・・。梓クン、お料理得意なの?」
「程度問題だけど。多分、安藤よりはな。」
綾人がいたなら
『そんじょそこいらのにわかが作る料理より、アズのが一番旨いに決まっている』
と余計な太鼓判を押しそうなものだが、その辺は言葉を濁す。
年頃の男の子としては、可愛い女の子の手料理は永遠の憧れで。
そのオンナノコより俺の方が料理が出来るってどうよ?
・・・これもある意味、見栄っぱりというんだろうか?
「うぅ」
これだけハードルを落としても敗戦を期する安藤は不徳の唸り声を洩らす。
「ま、そういうことで。頑張れよ。」
それだけ言って、俺は踵を返した。
移動教室へ向かう俺は、何故だかふんわりと膨らんだシフォンケーキみたいな気分だった。