シフォンケーキ
3 生クリームを泡立てます
「どうぞ。」
ディバックにエコバックを下げた俺は、玄関の鍵を開けて、背後の安藤を促した。
安藤は貰われてきた子犬のように緊張の面持ちでキョロキョロ様子を伺いながら、「おじゃまします」と家に踏み込む。
「あの・・・梓クン、ご両親は?やっぱりお邪魔じゃない?ホラ、夕食の準備とかもあるし・・・。」
「ん?・・・ああ。両親は共働きで遅いんだよ。ついでに綾人も今日はバイトだから。」
それに夕食つくるのにそんなに時間かけないぞ、俺は。
今、まだ夕方だろ。
料理の練習をするのに、俺の家のシンクを提供した。
気兼ねなく練習できるだろ?と言ったつもりだったのだが、安藤は思いもかけず動揺した。
「えっ、えええーっ!ふ、ふた、二人・・・・っ」
「?そうだけど・・・・」
何なんだ。
スイーツ兵器製造の過程を誰かに見られたいとでも言うか?
「い、いえ。なんでも、ありま、せん。ヨロシクお願いイタシマス。」
ギシギシと油の切れたロボットみたいに歩く安藤を横目に俺は首を傾げる。
安藤って思ってたよりちょっとオカシ・・・変わっている。