シフォンケーキ

俺は改めて、目の前に置かれたケーキの箱を見詰める。



「やっぱどう考えても綾人宛てなんだよなぁ・・・」


自分でいうのもなんだけど、俺だってそれほどモテナイわけじゃない。

尤も、自分のイイところなんてさっぱり理解出来ないのだが、それでも物好きなオンナノコから交際を申し込まれることはよくある。

生憎と見ず知らずの女の子と『とりあえず』で付き合うほど俺は柔軟な貞操観念はないので、お断りか、よくて友達付き合いに落ち着くのだが。



そんな『まぁモテル方じゃないの?』的な俺と違って、綾人は『モテル』。

それはもう断言してもいいぐらいに。


男の俺でも納得するほど容姿はイイ。

フェミニストで物腰が妙に優雅で、ガサツ極まる男子高校生の中にいれば、まさに掃き溜めに鶴状態だ。

ファンクラブまであるという実しやかな噂があり、綾人は常に取り巻きなのか、友人なのか分からないハーレムを形成している。


綾人と俺は従兄弟で、綾人の両親が仕事の都合で海外に行くことになり、俺の家で預かることになった。

とはいえ家は近くて幼い頃からよく遊んでいたので、兄弟も同然。

今更何の気兼ねもない。

・・・ってか、少しは謙虚になったらどうだ、と思うが。





安藤紫穂・サンは同じクラスの女子生徒。



勉強が出来て、運動もそこそこ出来て、真面目で、・・・・

だけど少々内気でリーダー各というタイプではない。


教室ではいつも仲の良い女友達と一緒にいる。






大人しくて優等生な少女だが、意外に芯が強かったり、頑固だったりするのを俺は知っている。
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