シフォンケーキ
「ただいまっ!」
リビングに踏み込むと安藤が慌てふためくように視線を泳がせた。
ってか、その顔が赤いのは俺の気のせいか?
「おっかえり~。早かったネ。」
綾人は相変わらずの王子様スマイルで俺を迎え入れる。
だーかーらー。
俺にまでそのサービスは不要だ。
気色悪い。
「んじゃ、頑張ってお使いしてきてくれた労いを込めて、紅茶は僕が入れてあげよーね。」
小気味よく鼻歌を奏でながら綾人は俺からレジ袋を受け取って、キッチンへ向かった。
「何か、あったか?」
さりげに安藤の傍に腰を下ろしながら、綾人を気にして小声で訪ねる。
「えっ!・・・・ううん!なにもっ・・・」
安藤、ウソ下手過ぎ。
声裏返ってるし。
俺とさっきし損ねたようなことでもしたんだろうか。
「・・・・・へぇ。」
ウソを見逃すつもりの言葉が、自分でも驚くくらいに刺々しく響いていた。