シフォンケーキ
びくっと肩を跳ね上げて、安藤が驚いたような顔で俺を見詰める。
俺はなんだか無性に腹立たしくて、業と視線を外していた。
「何?なんか険悪な雰囲気だなぁ~。」
紅茶のトレイを手にした綾人が戻ってくる。
取り付く島のない俺を無視して安藤に、なんかあった?と目混ぜで尋ねるあたりがさすが綾人。
安藤は取り繕うように笑顔を浮かべようとして失敗し、泣きそうな顔で
「なんでも、ない」
と小さく答えた。
サイテイ、俺。
イジメっ子かっつーの。
罪悪感に狩られながらも態度を変えるタイミングを計れずに、居心地の悪い雰囲気が続く。
だがいつまでも拗ねたフリなどしていられなかった。
「シホちゃん。僕、夕食は肉じゃががいいな。」
能天気極まる綾人のオネダリに俺と安藤は揃って「「は?」」と聞き返した。
「肉じゃが。なんとなく今夜は肉じゃがな気分なんだよねぇ。
このアズに匹敵する美味しいシュークリームを作る腕前で夕食作ってくれないかなぁ、なんて。
あ、勿論、シホちゃんも食べて行きなよ。
帰りはアズに送らせるし。」
何、勝手なことをサクサク決めてやがるんだ、オマエは!
「僕、ちょっとやることあるから、部屋にいるから出来たら呼んで。出来てからのお楽しみ~ってやつデスカ。ウキウキするね。」
ウキウキしているのはオマエだけだから、絶対!