シフォンケーキ
いきなりすぎて適当なでまかせで切り抜ける暇もなく、綾人は強請るだけ強請ってヒラリとリビングから去っていった。

ぽつんと二人が残された部屋。



「あの・・・・家には連絡すればいいんだけど・・・・その・・・」



泣きそうな声に視線を向ければ、縋るような安藤の視線。



俺は黙ってキッチンに行って、包丁とジャガイモを取ってきて、安藤の前に置いた。

剥いてみろ、と。



安藤は決死の面持ちで包丁を掴んだ。

・・・・って、俺はジャガイモの皮むきを要請したのであって人を刺せとは言ってないぞ。

どんだけ緊張だ。

否、この調子じゃ、指くらい詰めるかもしれない。



怪我をしないうちに要請を撤回しようとして




「あっ!」




ガッチガチに握り締めていたジャガイモが手からすっぽ抜けて俺の眉間をクリーンヒット。




「ごめんなさい!ごめんなさい!」





・・・・・・気が遠くなりそうだ。

< 26 / 40 >

この作品をシェア

pagetop