シフォンケーキ
薄っすらと赤かった安藤の顔が青く強張った。
「私・・・・」
唇をぎゅっと噛み締める。
伏せた瞳から涙が零れ落ちた。
心臓をざっくり抉るような痛みに、俺は性質の悪い夢から覚めるみたいに我に返った。
なんで俺、こんな傷付けるような事を・・・・。
「・・・ごめ、・・・私、帰るっ・・・・」
慌てて引きとめようとした手をすり抜け安藤はリビングを飛び出していく。
「――――っ。何やってんだよ、俺は。」
誰も居なくなった部屋で俺は苛々と頭を掻き毟った。
傷付けたいわけじゃないのに。
泣かせたいわけじゃないのに。
安藤が悪いわけじゃないのに。
今すぐ追いかけて行って謝りたいのに、罪悪感で許容量オーバー。
踏ん切りがつかなくて、立ち竦む。
ふとリビングのソファーに視線が止まる。
安藤、鞄を忘れていきやがった。
安藤のドジに感謝する。
俺は鞄を掴んで家を飛び出した。