シフォンケーキ

話の流れで聞き及んでいた安藤の家の方面へ走っていくと、暗い道をトボトボ重い足取りでコチラへ向かってくる安藤の姿が見えた。



「安藤。」




声を掛けると、安藤は飛び跳ねて硬直したが、逃げることはなかった。




「あ、あの・・・・ゴメンなさい。私・・・・鞄・・・」




どうやら安藤も途中で鞄を忘れたことに気付いて戻ってきたらしい。

俺は鞄を持って来てやったことを見せて教えてやるが、渡しはしなかった。



「送ってく。」


中々頷かない安藤に焦れて、畳み掛ける。



「綾人にも命令されてるし。一人で帰してなんかあったら俺が怒られる。」

「綾人クンの・・・ため?」



んなわけないだろ。

だけど、そうでも言わなきゃオマエは素直に俺に送らせたりはしないんだろ?



だから俺は安藤の問いにそうだと頷いた。

一瞬安藤は悲しげに乾いた笑みを浮かべて、小さく頷いた。
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