シフォンケーキ
諦めるって・・・綾人のことか?
・・・そりゃ、まぁ、そーか。
俺にあんなふうに唾棄されたらさすがに及び腰になるよな。
「や、安藤。アレさ・・・」
「いいの!」
言おうとした言葉は強引に安藤に遮られた。
安藤がニコリと笑顔を浮かべる。
「期待してて。今度はちゃんとお母さんに教えてもらって美味しいの作るから。」
安藤、ウソ下手過ぎだって。
イタイくせにそんな無理して笑顔なんか作るな。
別れの言葉とありがとうを最後に、安藤が家の中へ消えた。
俺は膨らむんだか、膨らまないんだか分からないケーキの生地をオーブンに入れた時みたいに、なんだか複雑な心境で帰路に着いた。