シフォンケーキ
期待の眼差しに晒されながら、俺はホールからほんの一欠け千切って口に入れた。
でもさ、安藤。
今日のお題は『メロンパン』だぞ。
シフォンケーキなんて作ってる場合かよ。
生地はフンワリ膨らんでいて、アヤシイ水玉もない。
味はほんのり甘くて・・・・・・飲み下すのに苦労するほどほろ苦く感じた。
苦味は俺に限った味覚なんだろう。
クッキング好きの母親に教えを請うただけあって美味しかった。
及第点。
これなら綾人も喜ぶよ――――――――――――
なけなしの誠意でそう言おうとして
「好き」
突拍子もない台詞に遮られた。