主人の夢には

「どうしてこの実験をしようと思ったんだい？」

教授は学生に静かに聞いた。学生は、

「すみません、先生。本当に多くの人達に迷惑をかけてしまって…。本当は、先生の手助けをしたかったのです。あの実験をやれば、周りを説得する根拠になるのではないか。そう思ったのです。それで、実験をしました…。」

と言った。


話を聞いて、教授はおもむろに口を開いた。

「やはりそうか…。真面目で研究熱心な君の事だ、そうじゃないかとは思っていたよ。しかし、熱心すぎると困る。今回の件で、バランスというものを覚えて欲しい。研究に、自分が飲み込まれないように、な。」

「…はい、先生。」

「そしてもう一つ。今回の件は真面目な学生の実験の失敗という事で話をつけてもらった。だから、君にはお咎めはない。ただ、学長からの伝言がある。

『今どき、君の様な熱心な学生は珍しい。だからこの失敗を活かして、次に繋げていって欲しい。』

だそうだ。少し苦笑はしていたが、君のことは褒めていたよ。」