たったひとつ
「緊張してるね。名前は?」
そう聞かれたとき初めて顔を見た。
その子はとても綺麗で童顔な私とは
到底同い年には見えなかった。
「新垣萌乃香です」
「敬語とかやめよ!あたし
西川優菜(ニシカワユナ)
よろしく」
高校生になって初めて出来た友達。
私はすごく嬉しかった。
「よろしくね」
無事入学式を終えて正門でお母さんを
待っていた時、またあの感覚。
瞳は勝手に先ほど見かけた先輩を
捕らえていた。
目が離せない。
それどころか今度は胸が
苦しくなった。
ドキドキしてた。
「萌乃香?」
お母さんが来て不思議そうに私の
顔を覗きこむ。
「あ、ごめん」
何もなかったかの様に振舞って
その日は帰った。
帰ってからも先輩のことが
忘れられなくて、でも私は
他の事で気を紛らわした。