たったひとつ

「緊張してるね。名前は?」

そう聞かれたとき初めて顔を見た。

その子はとても綺麗で童顔な私とは

到底同い年には見えなかった。

「新垣萌乃香です」

「敬語とかやめよ!あたし

西川優菜(ニシカワユナ)

よろしく」

高校生になって初めて出来た友達。

私はすごく嬉しかった。

「よろしくね」



無事入学式を終えて正門でお母さんを

待っていた時、またあの感覚。

瞳は勝手に先ほど見かけた先輩を

捕らえていた。

目が離せない。

それどころか今度は胸が

苦しくなった。

ドキドキしてた。

「萌乃香?」

お母さんが来て不思議そうに私の

顔を覗きこむ。

「あ、ごめん」

何もなかったかの様に振舞って

その日は帰った。

帰ってからも先輩のことが

忘れられなくて、でも私は

他の事で気を紛らわした。
< 3 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop