たったひとつ

静かな教室で私は湧哉の席に座る。

〝6月5日~大好き〟

そう落書きしてあって私は

恥ずかしかったけど嬉しくなった。

〝あたしも〟

人の机に勝手に落書きして顔を伏せた。



「萌乃香?」

名前を呼ばれて顔を上げた。

そこにはミーティングを終えた湧哉。

「ごめん、寝てた」

目をこすっていた私の頭を撫でた。

「人の机に勝手に落書きしたな?」

はっと目が覚め、恥ずかしくなった

私はうつむいた。

「だって、湧哉が・・・」

言葉が出てこない私を湧哉は

抱きしめる。

「嬉しすぎ!」

湧哉の力は強くって痛かったけど

幸せだった。

「ねぇ、萌乃香」

「ん?」

突然名前を呼ばれ、彼の腕の中で

私は顔を上げた。

「キスしてもいい?」

「え・・・」

私は今までキスなんてしたことがない。

心臓は急にドキドキとうるさくなった。

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