占い師の恋【完】
私の頭に手を乗せて、優しく撫でた杉山さんはもういつも通り。
さっきからいつも通りの所はあったんだけど、どこか違ったから。
今が本当にいつも通りって感じだ。
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「じゃあ、お先~。」
スタッフルームに入り私の淹れた珈琲を二人で呑んで。
先に呑み終わった杉山さんは席を立ってドアへと歩いていく。
まだ予約が入っている時間になっていないため、雑誌を読んでいた私は顔を上げて杉山さんの後ろ姿へ声をかけた。
「行ってらっしゃーい…。」
「あ。珈琲ごちそうさま。」
だらけた見送りに、へらっと笑いながら振り向いた杉山さん。
でも直ぐに真顔になって。でもどこか楽しそうに。
「今日のこと、青には言わないでね。」
「……え。」
「゙兄弟゙ってこと。
あいつきっと拗ねるから、色々と。」
「(色々…。)」
「それに………。」
杉山さんは眉をひそめて、少し悲しそうに。
「あいつは俺のこと恨んでるからさ。」
呟くようにして、この部屋に静けさを残して出て行った。
改めて、関わらない方がいいと思った。