占い師の恋【完】
私が拳を構えると、同時に聞こえた聞き覚えのあるハスキーな憎ったらしい声が…。
「ありゃー。ナニしてんのかな、茉希と緑は。」
「か、風見さん…!?」
言葉通り゙あちゃー゙って顔で私と杉山さんを交互に見ているのは、さっきぶりの風見さんで。
この居酒屋の空気が全くと言っていいほど似合わない。何か……、面白い。
「何笑ってんだお前は。」
「笑ってませんよ。」
「おーうっ!渚じゃぬぇーかぁあ!!ひっさしぶるぃぃいいーー!」
「「うっさい!!」」
マジで何だこのオッサン。ウザい以外何者でもない。
二人揃って怒鳴られた杉山さんは少し目を見開いたが直ぐに青ざめた笑顔に変わり
「……気持ち悪ぃ…。」
風見さんは口元を片手で覆う杉山さんの首根っこを掴んで恐ろしい速さでトイレへぶち込んだ。
怒っていると言うよりも呆れ顔で私の方へ歩いてくる風見さんが、エプロンを付けていることに初めて気がついた。
「…、何してんですか。」
「あ?…ああ。ここ俺ん家だ。」
「……で?」
「時々店の手伝いしてる。」
え、似合わない。と言ってしまいそうになったのは声となる寸前で飲み込んで。危ない危ない。