占い師の恋【完】
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「ありがとうございました。」
「…幸あれ。」
お客様表に書かれていた名前の最後の一人は、ぺこりと頭を下げて部屋を出て行った。
「…はあ…。」
ラスト一人、終了。
休み時間はあったけど、それも本の十数分。後はずっと集中しっぱなしだったから。
「つ、かれた…!」
何時もよりドッと疲れが押し寄せる。
やっと帰れると思い、帽子の鍔に指をかけ取ろうとした瞬間――、
ガチャリとドアの開放音が部屋に響き私の耳に届いた。慌てて帽子を被り直す。
「こんばんは。」
帽子の鍔の下から上目でチラリと見上げた声の主は、綺麗に口端を上げ妖艶に笑う、男だった。