占い師の恋【完】
しばらく考えて歩いている内に足はもう私のアパートまで後30メートル位の所まで来ていて。
少し足早にアパートを目指す。
~♪~♪~♪
数メートルおきにある街頭の灯りしかこの暗く寂しい道を照らす光は無く、やけに静かな路地に軽やかで甲高い音楽が鳴り響いた。
聞き覚えのあるその音楽は私の携帯で。バッグからそれを取り出すとディスプレイを確認する。
表示されたのは
{公衆電話}
不審に思いながらも通話ボタンを押し耳に押し付けた。
「…はい。」
『……、茉希。』
「…うん。」
『俺……、青。』
「分かってる。」
公衆電話から掛けてきたのは優しくも弱々しい声をした青で。
電話越しの青にさっきまで一緒にいたことを忘れるほど会いたくなる。
怪奇現象みたいだ。心理状態、不安定。
そんな気持ちを悟られないように冷静に慎重に言葉を返す。
「どうしたの。」
『伝えたいことが、あったから。』
「うん」としか返せない。小さくて消えそうな声で相槌を打つと、青は先程よりも鮮明に。
『俺の道は俺が決める。俺は俺を通すよ。
望むものができた。欲しいものができた。どうしても手に入れたい。』
「…。」
『気持ちごと、全部手に入れる。』