占い師の恋【完】
「負けるのが怖い?」
この時どうして、この男の挑発に乗ってしまったのか…。
男の、勝ち誇ったような顔が私の占い師としてのプライドを猛烈に駆り立てた。
「臨むところです。」
気付いたらそう言ってしまっていた。瞬間、男の口元に浮かぶ笑みはより一層濃いものになる。
きっと、この男は私がこう言うことを分かっていたんだろう。
目を妖しく細めて笑うと…一瞬だった。
すっかり油断していた私は男に腕を引き寄せられ、゙ヤバい゙なんて思った時にはもう遅く――。
目元まで深く被っていた帽子は、今度は男の頭に乗せられた。
「っ、……!」
「帽子、取りなよ。」
「言う前に、あんたが取ったじゃない!」
「ああ、ごめんごめん。」