占い師の恋【完】
いってー!!
と。叫んで膝を押さえて屈む風見さんを置き去りに先に店内へと入る。
「こんにちはー。ご予約なさってますか?」
「いいえ。暴力男に連れてこられました。」
「え?暴力…?」
美容師のお兄さんの笑顔が一気に困惑した顔へと変わる。
大丈夫ですかって顔で見てくるから何となく睨んでしまう。
「わりー波瑠。コイツ俺が連れてきたんだ。」
「あ、渚さん。お帰りなさい。」
波瑠と呼ばれた男の人は私の顔と風見さんを往復するように何度か見ると、ニヤリと笑って
「コレっすか。」
小指を立てて見せる。
ふ、古い…!
口角が引きつって苦笑いになると。
「俺はこんな暴力女はタイプじゃねー。」
「……黙れ27歳。」
店内なのであまり大きな声は出せず。小さな声で二人言い合っていると。
隣で話を聞いていたであろうお兄さんが、声を上げて笑い出した。
それを吃驚して見る私と睨むように見る風見さんを見て。さらに笑い出した。