占い師の恋【完】


シャキン、シャキン…


と。小気味よい音と共に床に髪が落ちていく。


髪切るなんていつ振りだろうと考えれば、主に梳かすだけにして来たから5年は長さを変えていない。

どんどん頭が軽くなっていく気がして、いざ切ってみれば名残惜しい。




「…っし。出来たぞ。」


頭上から聞こえた声で雑誌から顔を上げ鏡と睨めっこ。


「おお。さすが渚さん!君、似合うよ~。」



ひょこっと鏡に映った波瑠さんは、鏡越しに私をガン見してくる。

私は、と言うと。
あまりの自分の豹変振りに目を見開いて吃驚。


私のロングヘアだった黒髪はバッサリと切られて、前下がりのショートボブになっていた。

ついでにコテで巻かれた髪は緩く解され、ワックスでセットされている。



「い、や…。えと、まあなんか、凄い…ですね。」



そう言って髪の毛を指で遊んでみれば、自然に笑顔が浮かんできた。


「まあ……、ありがとうございます。」

「フッ。いいんじゃね?似合ってるし。」




頭をクシャリと撫でられ、少し恥ずかしくなったが。スッキリした自分の姿にまた笑った。

< 207 / 402 >

この作品をシェア

pagetop