占い師の恋【完】
「そんなことない。凄い似合ってるよ。まあ、吃驚したけど。」
少し笑い混じりに言う杉山さん。
あ。と声を上げると、
「青に写メでも送ってやろうかな。」
って……、有り得ない!そんなことされたら、恥ずかしくて返信が気になって仕方なくなるじゃないか。
「やめてください!送るなら自分の写真送ってください…!」
「いや。流石にそれは気持ち悪い。」
何とか青への写メ付き報告メールは阻止して。
私は珈琲を淹れ始める。
私の分はブラック、杉山さんのは、あの糖尿病にでもなりそうな最早珈琲とは言えないだろう珈琲。
「よくそんな甘いの呑めますね。信じられません。」
「まあ、俺にはそんな苦いもの呑む方が信じられないよ。」
お互いに゙信じられない゙という珈琲論の会話を交わして仕事に取りかかった。
今日のお相手の表に記されている名前を目で追うように見ていく、と。
時間が、止まったんじゃないかと思った。
一番最後に記されていた名前は、記憶の中の悪夢にしかならない。
“明智茉莉”
一見、女性としか受け取れない名前だが。
同姓同名なんて、あるだろうか。