占い師の恋【完】
でもそれは私が覚えていることを拒否していただけであって。
父を目の前にした今、こんなにもハッキリ父の顔や声。
目を細めて笑う癖などまで覚えている。
ゆっくりと私に歩み寄ってくる父に、今私は占い師のMAKIだということを忘れかけた。
「おかけください…!」
「ありがとう。」
久しぶりに間近で見る父の顔は年月相応に老けてはいたが、面影は残っていた。
父は何故ここに来たのだろうか。
父は何故あんなに信じていなかった占いをしに訪れたのか。分からない。
取りあえず。占いをしていかなければ。それにもしかしたら父は私に気づいていないかもしれないではないか。
そうだ。ただ娘と名前が同じだから来たのかもしれないし。
「…お名前は。」
「明智茉莉、と言います。」
「…明智さん。何を占いますか。」
落ち着け。落ち着け自分…。
そう言い聞かせるように小さく深呼吸を数回繰り返して、返答を待った。