占い師の恋【完】
「質問に答えられますか。」
「…どういう意味でしょう。」
父は真っ直ぐに私を見ているのだろう。
私は、ずっと父を見れずにいた。見れるわけがない。
私には、恐怖という父の姿しか思い出にないのだから。楽しかった記憶なんて…、
「僕の質問に、答えてくれればいいんです。」
「……占い、は…?」
「いえ。結構です。」
占い師の元に来て、占いは結構なんて…。父の考えが全く分からない。
自然に寄った眉を直すように咳払いをすれば、父はゆっくりと話し出した。
「僕は、若いときに離婚したんです。原因は、僕の身勝手なDVで。
妻はいつも泣いていました。全てが思い通りにいかない…、それに苛立ってどんどん自分の大切なものを見失いました。」
「……。」
静かに噛みしめていくように自分の過ちを話す父。ただただ、耳を傾けることしかできない。
実際、今も父が怖くて仕方がない。
私のトラウマにしかすぎないのだから。