占い師の恋【完】
父は、私を見る目を細めて口元に悲しく弧を描くと。
「茉希…は。僕を恨んでいますか。」
「……わた…、娘さんは、あなたを。
恨んではいません。」
……それは本当だった。
私は、父を恨んだことは一度だってない。
お母さんを苦しめて苦しめて苦しめて…そのことを許すことは出来ないが、たった一人の父親を恨めるはずがないのだ。
「君は…茉希なんだろ?」
「っ…、お、父さん…。」
お父さんは初めから私の正体に気づいていた。そっと深くかぶっていた帽子を取られ、視界が一気に明るくなる。
お父さんの顔を見た瞬間、必死に堪えていた熱いものが零れた。
「茉希…、」
「何で…何で今更…っ!今更私の目の前に現れたりするのよ!お父さんのせいで…、全部めちゃくちゃよ!!
いっそのこと、死んでくれって…。私のこと恨んでんのは、お父さんじゃない!」
一度失った歯止めはきかない。涙で喘ぎのような声で喚き散らす。
父は私をずっと見つめ続けて黙っている。
何か、答えてよ…。
死んでくれでも何でも、あの時みたいに言ってくれればいいじゃない。
その方が私だって、今度こそお父さんを嫌いになれる。