占い師の恋【完】
着いたよ、と言われて見上げると。綺麗で大きすぎる程大きなマンションだった。
凄いと漏らすと、親のお金だと恥ずかしそうに笑った。
棗ちゃんからは自慢気な態度とかそういうものは感じられない。本当にいい子だ。
マンションの15階に部屋があるらしくエレベーターでその階を目指す。
部屋に入るまで、私の手首は棗ちゃんの温かい手が包んでいた。
「いらっしゃい。」
「…は?」
棗ちゃんは何故か自分の部屋のチャイムを鳴らす。その横顔を怪訝に見下ろすと、ガチャリと。
向こう側から開けられた扉。
中から顔を覗かせたのは、どこぞの暴力野郎。
素のままに声を出せばソイツはピクリと眉を寄せて私を見た。
「よう茉希。今朝振り。」
「何で風見さんがここにいるんですか。不法侵入ですか。」
「違うよまっきー!渚と私は…えっと、」
何故か照れたように口ごもる棗ちゃんに首を傾げれば、頭上から聞こえた鼻で笑う声。
「同棲。してんだよ。」
ああ、同棲ね。同棲…、ん?んんん!?
「同棲ええええええええ!!!?」
私の雄叫びのような声は階中に響き渡った。