占い師の恋【完】


「あっ、まっきー起きたあ?」


ひょこっとキッチンの方から顔を覗かせたのは、淡いピンクのエプロンを身に纏った棗ちゃん。

まさに天使…っ!
スイート・エンジェル光臨。


「何作ってんの?」

「んーっと…。オムライス!」


仁王立ちしていた男は天使へと優しい声をかけながら近寄る。

二人並んで日常会話。
既に夫婦のようでもあるしなんせ同棲しているという、事実が昨日発覚したからな。



(羨ましい…。)


柄にもなく自分らしくもない。そんなことを思ってしまったのは、私の心の内だけに。

ふと、目に留まった机の上にある私の携帯。
それが点滅して光っているので急いで手に取った。



「もしもし…!」

『あれ寝てたー?』

「…なんだ杉山さんですか。焦って損しました。」

『酷いな。俺折角茉希ちゃん知らないと困るだろうから電話してあげたのにー。』


変に電話越しに間延びした声を訝しめば、おそらく私がどんな顔をしているのか予想できたのだろう。

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