占い師の恋【完】
――…それから。バイトが終わると店長は、車で中華料理屋に連れて行ってくれた。
大量に注文されて、吃驚したけど。二人で何気ない会話を交わしながら食べた。
お店から出たのは、来店してから2時間後。大分ここにいたんだな、と外の空気を吸い込んでふと周りを見渡してみる。
「…はは、」
その先に見えたものに、自嘲的な空笑い。
楽しそうに、少し照れた顔をしながら肩を並べて歩く男女。道路を挟んでいるが、生憎車は通らない。会話は途切れ途切れにしか聞こえないけど、笑っている。
「な、んで…。」
゙大切なもの゙って…何それ。
アイツは結局、中途半端なままだ。
「茉希ちゃーん!送るよ。」
少し離れた所、車の窓から顔を覗かせて私の名を叫ぶ店長に目を向けて、もう一度アイツに視線を戻す。
「っ…、」
男の視線は、真っ直ぐに私を捕らえていて、困惑が伺える。