占い師の恋【完】
感情はストレートに、私の頬を涙という形で濡らした。
唇を噛みしめて、この水を止めようとはしてみるが全く効果はなかった。ただただ、止めどなく溢れる涙が、私の服に染みをつくるだけ。
と。
ふわり、遠い昔に忘れたと思っていたはずの遠慮気味に付けられたら柑橘系の爽やかな香水の香りが鼻をくすぐった。
そう。父の腕によって後頭部を抱き寄せられたのだ。
今、私の頭を机を少し乗り出すようにして父の胸の中にある。
何年振りに感じた父親の温かさは、酷く安心感を得れる。やはり、恨んだなんて言いながらも。
(最後まで恨みきれはしないんだな…。)
改めて実感させられ、自嘲的な笑みが涙のせいで漏れた嗚咽と共に出た。