占い師の恋【完】
笑いながら差し出した手を、渚は簡単に自身の大きく男らしい、ごつごつとした手で包み込む。
心地良い温かさが愛しい。優しさが愛しい。渚が愛しい。
「冷てえな…。」
「体温低いんだよね。すぐ冷たくなる。」
「…棗。」
低くハスキーな声が私の名を呼ぶ。脳の芯が疼くような感覚に襲われ、もっと呼んでほしいと思う。
何?と、渚の顔を見上げて。見えたのはバックに月、その下で私を見下ろす意地悪のような、悪戯のような…笑顔。
ニヤリ。笑った渚の顔は私の中で誰よりも格好良かった。あ、勿論、ずっと格好良いけどね。
……やけにスローに見える渚の動き。ゆっくりと私の視界いっぱいに広がる渚の顔。