占い師の恋【完】
残念だけど。声だけでなんて分かるわけない。
「分かりません。」
“えー、俺だよ。”
「知りません。新手の詐欺か何かですか。」
“うーん…。
俺だよ、茉希。”
微笑を含む、脳内を麻痺させるような甘い声が受話器を通って私の鼓膜を叩いた。
この痺れみたいな感覚には、覚えがある。
「……青?」
“御名答。さすが占い師さん。”
「…何で?」
“MAKIにかわってって言えば直ぐに代わって貰えたよ。”
――…、なるほど。
普通の受付の人なら代わったりしない。恐らく、あのサングラスが何故か電話に出て取り次ぎやがったんだ。後でしばく。
「…で。何の用?」
“せっかちだね。んーとね、明日の茉希の休みが欲しいんだけど。”
………は?
「私の、休み?」
“そ。茉希の休み。”
「…何で休みって知ってるの?」
“さっき電話に出た男が教えてくれた。”