占い師の恋【完】
「…着替えるから、見ないでよ。」
「ああ、大丈夫。」
「(大丈夫ってどういう意味だよ…。)」
ちょっとした苛立ちをプラスさせられ、ドスドスと大きな足音をたてながら寝室のドアをバタンと勢い良く閉めた。
タンスから短パンとTシャツを取り出して着ると、洗面所へ向かい顔を洗う。
歯を磨き終え、髪を後ろで纏めて高い位置でポニーテールにしてみる。
リビングに戻ると香ばしい香りがし、キッチンには青の姿。
「…何してんの?」
「茉希って珈琲、豆から煎れてんだね。」
「(私の質問は無視か。)」
久しぶりに珈琲煎れたな、と言った青に少し驚き。
「珈琲…豆から煎れれたんだね。」
「うん。家で見てたから。」
「へえ…できたの?」
カップに淹れて手渡してくれた珈琲を一口飲み込んだ。
ほんのりと口に広がるブラックの苦味。
「美味しい。」
「この豆、お気に入り?買い置きしてある。」
「…見なくていいから。」