占い師の恋【完】
「気に入ったら、誰にでもそうすんの。」
「違うよ。全部、茉希だけ。」
「…。」
サラリと言うから、ちょっと疑ってしまう。
よく分かんない。なんか、調子狂う。
青といると、自分が自分じゃなくなってしまいそうで少し怖いんだ。
「茉希、ホント可愛い。」
「な、急に何!?てか、風見さんの態度私にだけおかしいでしょ!!」
「あはは、でも渚は気に入った人にしかあの表情見せないよ。」
気に入る要素がいつあったんだろう。
まあ…、それはそれで嬉しいような気もするけど。
自分でも知らぬ間に笑っていたようで。
「茉希、渚が気になるの?」
どういうわけか、青の頭の中はこうなる。
で、私も条件反射で頬が赤くなる馬鹿正直者で。
「違うにきま…」
その刹那。
視界を占領する端正な顔に、唇に感じた熱。
キスされたんだって理解するまでにそう時間はかからなかった。
数秒触れ合った唇は小さくリップ音を響かせてゆっくり離れていく。
「俺以外の男と仲良くするなんか、許さないよ。」
なんなんだよ、この男は。
こうして、出会って間もない男とのデートとかいうものにより、私のファーストキスとやらは奪われたのだ。